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Blue Night Green Star 1:15
今日も彼は、挨拶をする。
夜空のような青いマントを翻し、
星のような緑の瞳を細めながら、
素敵な笑顔で皆に手を振る。
憧れてやまない、私の王子さま。
彼の姿を見る為なら、早起きしてどこへでも行った。
彼の声を聴く為なら、どんなに押しやられても負けなかった。
彼の名前を呼ぶ為なら、声が嗄れたって構わなかった。
彼の無事を祈る為なら、何日寝なくても平気だった。
私はいつだって、彼でいっぱいだった。
彼より大切なものなんて、何も無かった。
私の人生は、青と緑で出来ていたんだ。
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SMILY RED KILLER 1:42
私の眼球は、彼の姿を見る為に。
私の鼓膜は、彼の声を聴く為に。
私の喉は、彼の名前を呼ぶ為に。
私の腕は、彼の無事を祈る為に。
その為だけに、存在していたのに。
ねえ、どうして君はそんなに優しいの?
どうしてそこまでしてくれるの?
どうして「運命」だなんて言うの?
どうして、無邪気に笑いながら、私の心を刺していくの?
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white out 1:53
青と緑は、漆黒にも染められない色だった。
彼の色で染まっていたはずの爪は、
気が付けばひとつだけ、真っ白になっていた。
この指は、君の為に空けてある。
彼に捧げたはずの指を、君が染めていったんだ。
でも私には、君の色がわからない。
だからずっと白いまま。
だからずっと、空白のまま。
いっそこの指が無くなってしまえば良いのにと、何度も思った。
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KILLING DREAM 1:39
お前なんか大嫌いだと何十回唱えても、
大好きな気持ちは変わらない。
今日も君の夢を見た。
君を殺す夢だった。
あと何回君を殺せば、私は自由になれるんだろう。
私の眼球は、君の姿を見る為に。
私の鼓膜は、君の声を聴く為に。
私の喉は、君の名前を呼ぶ為に。
私の腕は、君の体に触れる為に。
大好きなのと同じ分だけ、君が憎くてたまらない。
君を想えば想う程、私の心は血を流す。
姿を見ることも、声を聴くことも、名前を呼ぶことも、体に触れることも、
全て痛みに変わってしまうなら、
ぜんぶ、いらない。
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1st show - EyesLess - 0:59
君に貰った手紙を燃やした。
火掻き棒が、私に囁く。
"見たくないなら、見れないようにすれば良いんだよ。"
君のことが、大好きだよ。
大好きだから、真実など見たくないんだ。
"そうだよね"と答えると、火掻き棒が笑った気がした。
…眼球を潰したところで、気持ちは変わらないけれど。
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2nd show - EarsLess - 0:52
真っ暗な中で、君の声を探していた。
姿を見ることが出来なくても、
私の脳は、君の声で君の姿を想像する。
君を探してさぐった指に、ちくりとした痛みが走った。
"聴きたくないなら、聴こえないようにすれば良いんだよ。"
君のことが、大好きだよ。
大好きだから、嘘なんて聴きたくないんだ。
鼓膜を破ったところで、まだまだ気持ちは変わらないけれど。
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3rd show - VoiceLess - 1:07
真っ暗な静寂の中で、私は君の名前を呼んだ。
私の脳は、喉の震えでその響きを想像する。
名前の音だけで、幸せになれる時期は終わった。
幸福の言葉だった音は、呪いの言葉に変わっていた。
私はもう、何をすれば良いのかわかっていた。
使い慣れたキッチンからナイフを取り出し、微笑んだ。
"呼びたくないなら、呼べないようにすれば良い、でしょ?"
喉を切り裂いたところで、気持ちは全く変わらないけれど。
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4th show - ArmLess - 1:13
目が見えなくても、耳が聴こえなくても、声が出なくても、
手探りで近付けば、君に触れることが出来た。
布の感触、肌の感触、髪の感触、全てが君を形作る。
顔をなぞれば、私の脳は、君の笑顔を想像する。
その笑顔を見たいが為に、私は色んなことをした。
全ては報われたような気がしていたのに、
一度だって君は、私に向き合うことをしていなかった。
その証拠にほら、今だって、抱き締め返そうともしてくれない。
庭に木を切る為の斧があるのを、覚えていた。
あの斧はきっと、私の腕を切り落とす為に作られたのだ。木ではなく。
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Mermaid 1:24
可哀想な人魚姫。
大切な瞳も、大切な耳も、声も手もみんな差し出した。
これ以上、どんな代償が必要なの?
わかっている。王子は私を選ばない。私は王子を殺せない。
君が誰を選んだって、君を殺せるのは夢の中でだけ。
私は泡になるしかない。
魔女との契約は、果たされる。
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THE DYED WORLD 2:24
堕ちたのは、荊の蜘蛛の巣。
もがけばもがくほど、絡まり、傷付き、血まみれ。
耐えられない痛みが、身体中を襲う。
潰した眼球から血と涙がこぼれる。
破った鼓膜と、切り裂いた喉と、切り落とした腕から、血が止まらない。
君に刺された心からも、血が、止まらない。
遠退いていく意識の端で思った。
白いままだった薬指の爪は、きっと私の血で真っ赤なんだろうと。
…私にはもう、見えないけれど。