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takase aya

THE DYED WORLD

原案・作画
はるやみ
作曲
t
  1. Blue Night Green Star 1:15

    今日も彼は、挨拶をする。
    夜空のような青いマントを翻し、
    星のような緑の瞳を細めながら、
    素敵な笑顔で皆に手を振る。
    憧れてやまない、私の王子さま。

    彼の姿を見る為なら、早起きしてどこへでも行った。
    彼の声を聴く為なら、どんなに押しやられても負けなかった。
    彼の名前を呼ぶ為なら、声が嗄れたって構わなかった。
    彼の無事を祈る為なら、何日寝なくても平気だった。

    私はいつだって、彼でいっぱいだった。
    彼より大切なものなんて、何も無かった。
    私の人生は、青と緑で出来ていたんだ。
  2. SMILY RED KILLER 1:42

    私の眼球は、彼の姿を見る為に。
    私の鼓膜は、彼の声を聴く為に。
    私の喉は、彼の名前を呼ぶ為に。
    私の腕は、彼の無事を祈る為に。

    その為だけに、存在していたのに。

    ねえ、どうして君はそんなに優しいの?
    どうしてそこまでしてくれるの?
    どうして「運命」だなんて言うの?

    どうして、無邪気に笑いながら、私の心を刺していくの?
  3. white out 1:53

    青と緑は、漆黒にも染められない色だった。
    彼の色で染まっていたはずの爪は、
    気が付けばひとつだけ、真っ白になっていた。

    この指は、君の為に空けてある。
    彼に捧げたはずの指を、君が染めていったんだ。
    でも私には、君の色がわからない。
    だからずっと白いまま。
    だからずっと、空白のまま。

    いっそこの指が無くなってしまえば良いのにと、何度も思った。
  4. KILLING DREAM 1:39

    お前なんか大嫌いだと何十回唱えても、
    大好きな気持ちは変わらない。
    今日も君の夢を見た。
    君を殺す夢だった。
    あと何回君を殺せば、私は自由になれるんだろう。

    私の眼球は、君の姿を見る為に。
    私の鼓膜は、君の声を聴く為に。
    私の喉は、君の名前を呼ぶ為に。
    私の腕は、君の体に触れる為に。

    大好きなのと同じ分だけ、君が憎くてたまらない。
    君を想えば想う程、私の心は血を流す。

    姿を見ることも、声を聴くことも、名前を呼ぶことも、体に触れることも、
    全て痛みに変わってしまうなら、

    ぜんぶ、いらない。
  5. 1st show - EyesLess - 0:59

    君に貰った手紙を燃やした。
    火掻き棒が、私に囁く。
    "見たくないなら、見れないようにすれば良いんだよ。"

    君のことが、大好きだよ。
    大好きだから、真実など見たくないんだ。

    "そうだよね"と答えると、火掻き棒が笑った気がした。

    …眼球を潰したところで、気持ちは変わらないけれど。
  6. 2nd show - EarsLess - 0:52

    真っ暗な中で、君の声を探していた。
    姿を見ることが出来なくても、
    私の脳は、君の声で君の姿を想像する。

    君を探してさぐった指に、ちくりとした痛みが走った。
    "聴きたくないなら、聴こえないようにすれば良いんだよ。"

    君のことが、大好きだよ。
    大好きだから、嘘なんて聴きたくないんだ。

    鼓膜を破ったところで、まだまだ気持ちは変わらないけれど。
  7. 3rd show - VoiceLess - 1:07

    真っ暗な静寂の中で、私は君の名前を呼んだ。
    私の脳は、喉の震えでその響きを想像する。

    名前の音だけで、幸せになれる時期は終わった。
    幸福の言葉だった音は、呪いの言葉に変わっていた。

    私はもう、何をすれば良いのかわかっていた。
    使い慣れたキッチンからナイフを取り出し、微笑んだ。
    "呼びたくないなら、呼べないようにすれば良い、でしょ?"

    喉を切り裂いたところで、気持ちは全く変わらないけれど。
  8. 4th show - ArmLess - 1:13

    目が見えなくても、耳が聴こえなくても、声が出なくても、
    手探りで近付けば、君に触れることが出来た。
    布の感触、肌の感触、髪の感触、全てが君を形作る。
    顔をなぞれば、私の脳は、君の笑顔を想像する。

    その笑顔を見たいが為に、私は色んなことをした。
    全ては報われたような気がしていたのに、
    一度だって君は、私に向き合うことをしていなかった。

    その証拠にほら、今だって、抱き締め返そうともしてくれない。

    庭に木を切る為の斧があるのを、覚えていた。
    あの斧はきっと、私の腕を切り落とす為に作られたのだ。木ではなく。
  9. Mermaid 1:24

    可哀想な人魚姫。
    大切な瞳も、大切な耳も、声も手もみんな差し出した。
    これ以上、どんな代償が必要なの?

    わかっている。王子は私を選ばない。私は王子を殺せない。
    君が誰を選んだって、君を殺せるのは夢の中でだけ。

    私は泡になるしかない。
    魔女との契約は、果たされる。
  10. THE DYED WORLD 2:24

    堕ちたのは、荊の蜘蛛の巣。
    もがけばもがくほど、絡まり、傷付き、血まみれ。

    耐えられない痛みが、身体中を襲う。
    潰した眼球から血と涙がこぼれる。
    破った鼓膜と、切り裂いた喉と、切り落とした腕から、血が止まらない。
    君に刺された心からも、血が、止まらない。

    遠退いていく意識の端で思った。
    白いままだった薬指の爪は、きっと私の血で真っ赤なんだろうと。
    …私にはもう、見えないけれど。