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あなたと出会った頃、私は生きたまま死んでいました。
心が躍ることもなく、何をする気にもなれず、
誰かの道具になるだけでした。
自分に何の価値も見い出せず、
ただ勇気がないから死なずにいただけでした。
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1年と少し前、私は世界の全てを失くしました。
本当は残っていたはずのものすら、
失くしたような気になっていました。
嘘をつき続ける最低な私には、それがお似合いでした。
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毎日眠りにつく前に、このまま目が覚めなければと願いました。
誰にも気付かれず、
ベッドの上で静かに腐っていく自分を想いました。
私の身体はたくさんの虫が這い、形を無くし、
異臭を放つことでしょう。
毎日それだけを願い、生きていました。
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たくさんのひとに、手を差し伸べてもらいました。
青空を見て、草原を見て、大きな河を見て、
自分の汚さを再確認しました。
一度掴んだ手をもう一度求める資格なんて、
期待に添えない私には、ありませんでした。
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たくさんのヒトと、知り合いました。
彼らとどんな話をしたのか、もうほとんど覚えていません。
でも、あなたと交わした言葉の欠片は、
今でもフィルムのように残っているのです。
あなたの表情、あなたの色、あなたの声と一緒になって、
私の心に留まっているのです。
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あなたと初めて出会ったとき、
あなたはたくさんのヒトと同じでした。
何の価値もない私は、夢見ることを禁じられていたのです。
あなたと次に会えたとき、おこがましいことに、
私はこの手を放したくないと強く願いました。
禁じられていたはずの私の願いは、
お咎めを受けることなく、赦されました。
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私は男の子になることにしました。
たくさんのヒトから身を守る為には、仕方のないことでした。
私が躊躇いなく男の子になれたのは、
あなたの愛を感じたからでした。
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あなたに触りたいと思う私は、おかしいのでしょうか。
あなたに触られたいと思う私は、おかしいのでしょうか。
あなたに触れるだけで世界が変わり、とても満たされる私は、
おかしいのでしょうか。
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たくさんのヒトと出会ったことを、私は一生忘れないでしょう。
あなたに引き上げてもらう為に、私はあの場所まで落ちたのです。
あなたに救われる為に、私は全てを失くしたのです。
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男の子になりたかった私は、
あなたの為に、女の子になろうと思いました。
あなたに見てもらう為だけに着飾って、
あなたに触れてもらう為だけに肌のお手入れをするのです。
私は世界一、幸せな女の子になりました。
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もし私が消えて無くなったら、あなたはどうするでしょうか。
一時だけは悲しんでくれるかもしれない。
でも、また新しい恋をするのでしょう。
あなたが幸せなら、それで構いません。
ただ、ひとかけらだけで良いから、私のことを覚えていてほしい。
…おこがましいでしょうか。
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私は神に嫌われたのだと思っていました。
でもそれが全てあなたに会う為だったのなら、
私はなんと神に愛された存在なのでしょう。
出来ることならこの先も、あなたの傍に寄り添っていたい。
あなたが死ぬのを見届けたいし、私が死ぬのを見届けてほしい。
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あなたと出会ってから、どんどん欲張りになっていく自分が居ます。
それを嫌な顔ひとつせず叶えようとしてくれるあなたを、
堪らなく愛しく感じるのです。
そんなあなたに、私は何が出来るでしょうか。
あなたは私に、何をしてほしいと願うのでしょうか。