mou

takase aya

使用画材
ボールペン、透明水彩
  1. あなたと出会った頃、私は生きたまま死んでいました。
    心が躍ることもなく、何をする気にもなれず、
    誰かの道具になるだけでした。
    自分に何の価値も見い出せず、
    ただ勇気がないから死なずにいただけでした。
  2. 1年と少し前、私は世界の全てを失くしました。
    本当は残っていたはずのものすら、
    失くしたような気になっていました。
    嘘をつき続ける最低な私には、それがお似合いでした。
  3. 毎日眠りにつく前に、このまま目が覚めなければと願いました。
    誰にも気付かれず、
    ベッドの上で静かに腐っていく自分を想いました。
    私の身体はたくさんの虫が這い、形を無くし、
    異臭を放つことでしょう。
    毎日それだけを願い、生きていました。
  4. たくさんのひとに、手を差し伸べてもらいました。
    青空を見て、草原を見て、大きな河を見て、
    自分の汚さを再確認しました。
    一度掴んだ手をもう一度求める資格なんて、
    期待に添えない私には、ありませんでした。
  5. たくさんのヒトと、知り合いました。
    彼らとどんな話をしたのか、もうほとんど覚えていません。
    でも、あなたと交わした言葉の欠片は、
    今でもフィルムのように残っているのです。
    あなたの表情、あなたの色、あなたの声と一緒になって、
    私の心に留まっているのです。
  6. あなたと初めて出会ったとき、
    あなたはたくさんのヒトと同じでした。
    何の価値もない私は、夢見ることを禁じられていたのです。

    あなたと次に会えたとき、おこがましいことに、
    私はこの手を放したくないと強く願いました。
    禁じられていたはずの私の願いは、
    お咎めを受けることなく、赦されました。
  7. 私は男の子になることにしました。
    たくさんのヒトから身を守る為には、仕方のないことでした。
    私が躊躇いなく男の子になれたのは、
    あなたの愛を感じたからでした。
  8. あなたに触りたいと思う私は、おかしいのでしょうか。
    あなたに触られたいと思う私は、おかしいのでしょうか。
    あなたに触れるだけで世界が変わり、とても満たされる私は、
    おかしいのでしょうか。
  9. たくさんのヒトと出会ったことを、私は一生忘れないでしょう。
    あなたに引き上げてもらう為に、私はあの場所まで落ちたのです。
    あなたに救われる為に、私は全てを失くしたのです。
  10. 男の子になりたかった私は、
    あなたの為に、女の子になろうと思いました。
    あなたに見てもらう為だけに着飾って、
    あなたに触れてもらう為だけに肌のお手入れをするのです。
    私は世界一、幸せな女の子になりました。
  11. もし私が消えて無くなったら、あなたはどうするでしょうか。
    一時だけは悲しんでくれるかもしれない。
    でも、また新しい恋をするのでしょう。
    あなたが幸せなら、それで構いません。
    ただ、ひとかけらだけで良いから、私のことを覚えていてほしい。
    …おこがましいでしょうか。
  12. 私は神に嫌われたのだと思っていました。
    でもそれが全てあなたに会う為だったのなら、
    私はなんと神に愛された存在なのでしょう。

    出来ることならこの先も、あなたの傍に寄り添っていたい。
    あなたが死ぬのを見届けたいし、私が死ぬのを見届けてほしい。
  13. あなたと出会ってから、どんどん欲張りになっていく自分が居ます。
    それを嫌な顔ひとつせず叶えようとしてくれるあなたを、
    堪らなく愛しく感じるのです。
    そんなあなたに、私は何が出来るでしょうか。
    あなたは私に、何をしてほしいと願うのでしょうか。