mou

takase aya

ほんとはね

作画
森村志帆
  1. ねこのアンディちゃんは、とってもきれいな女の子。
    ちょっぴり頑固で、さみしがり屋さんです。

    うさぎのモニカちゃんは、とってもやさしい女の子。
    しっかり者で、アンディちゃんのことが大好きです。
  2. ずっといっしょにいようね。
    そう約束していたのに、
    モニカちゃんは 遠くへ 行ってしまうことに なりました。

    ずっといっしょにいたかった。
    でも、ふたりには どうしようも ありませんでした。

    てがみ、かくよ。
    モニカちゃんがそう言うと、
    アンディちゃんに すこしだけ、笑顔がもどりました。
  3. 約束通り、お手紙はちゃんと届きました。
    新しい生活のこと。
    新しい友達のこと。
    今まで知らなかった、たくさんのこと。

    モニカちゃんの手紙は、楽しさに あふれていました。
  4. アンディちゃんは、さっそくお返事を書くことにしました。

    お日さまが きらきらしていて きれいだったこと。
    新しいお花が 咲いていたこと。

    虹が出たこと。
    ピーマンを食べれるようになったこと。
    書きたいことは、たくさんありました。
  5. ねえ、ほんとはね、あいたいよ。
    そう言いたかったけど、言えませんでした。
    言ってしまったら、モニカちゃんを困らせてしまうと思ったからです。

    あいたい。あって、てをつないで、おはなしして、
    ずっといっしょにいて、あのくもきれいだね、なんていって、
    わらって、いっしょにごはんをたべて、

    ついこの間まで当たり前にあったことが、
    今ではとてもとても遠いことで、
    アンディちゃんは涙が止まりませんでした。
  6. だいすきな、お魚も ミルクも、
    今は全然おいしくなくなってしまいました。

    モニカちゃんは、わたしに あいたくないのかなあ?
    アンディちゃんはこんなに苦しんでいるのに、
    モニカちゃんは何も言ってくれません。

    どうして あいたいって いってくれないの?
    アンディちゃんの悲しい気持ちは、
    だんだん悔しい気持ちに変わっていきました。
    真っ黒になった気持ちを吐き出すように、
    真っ黒な手紙を出してしまいました。
  7. いきおいだけで出してしまった手紙。
    アンディちゃんは、後悔していました。

    響くノックの音。
    アンディちゃんがドアを開けると、
    そこにはいちばん会いたかった子が立っていました。

    ごめんね、ごめんね。
    わたしも あいたかったよ。
    ほんとはね、ずっとずっと、あいたかったんだよ。
    モニカちゃんは涙をこらえながら、必死で言葉をつむぎます。
  8. 悔しさは涙に変わり、笑顔に変わりました。
    言いたいことは たくさんたくさんあったけど、
    もうこの言葉しか、出てきませんでした。

    ありがとう。ほんとにね、だいすきだよ。